本研究会の趣旨
先進国における人口転換・疫学転換に伴い、「障害」という問題は – 衰えであれ慢性的であれ後遺症であれ先天性であれ – 最重要の研究課題となっている。1980年代以降、社会科学の分野で障害学は大きく発展したが、国際的な認知度は依然として英語圏諸国と批判的障害学(Critical Disability Studies)が支配的である。日本でもフランスでも、他のアジアやヨーロッパ諸国と同様、同時期から研究が進んだが、今まで日仏両国の比較研究や共同研究はほとんど行われていない。しかし、日本とフランスの状況には類似点と相違点があり、これらを分析し、近年の両国における障害者への社会的対応の変容や将来に取り組むべき問題に光をあてることで、個人の人権や市民権の尊重を基本原理として、人口動態の課題にも向き合うことができるだろう。
社会政策の分野では、両国とも福祉国家の遺産である人口の衛生学的アプローチが特徴で、昨今は超国家的な路線、特にフランスが2010年に日本が2014年に批准した国連の障害者権利条約に触発され、インクルージョンや差別解消政策へ移行している。このような社会政策の二つの方向性は、一方では特別な保護や法的措置(例えば、フランスと同様に日本でも導入された障害者雇用の法定雇用率)、他方ではインクルージョンや一般法に依拠することを緊急促進するものであり、一部の公共政策分析担当者も含めて、調和が困難であるとしばしば理解されている。
障害者団体は隔離政策措置が引き起こす父権主義や抑圧を糾弾する。これらの運動は両国で様々な形を取ったが、今日の特殊教育の脱施設化への動きに大きく貢献した。
このような変化を理解するために、社会科学は重要な役割を果たす。今日の変容が長期的に障害者の日常生活とライフコースにどのような影響を与えているかを分析し、インクルージョンと社会参加の促進を目的とした政策の有効性を評価することができる。
本研究会は、これまで学術的な交流の機会が少なかった障害の問題に取り組む日本とフランスの研究者を結集し、日仏の学術ネットワーク構築への第一歩となることを目指す。
実行委員会
支援者と協力者